【事例紹介】ノバレンズのデザイン実績 麻布十番「ばんげ」
今回ご紹介するのは、東京都港区麻布十番にかつて存在した和食店「ばんげ」です。ノバレンズが手がけたこのプロジェクトは、香川県の食材や地酒を提供する和食店として、明治時代に建てられた一軒家をリノベーションし、和モダンの魅力を引き立てた空間デザインが特徴です。都会の喧騒を忘れさせる緑に囲まれた「ばんげ」の空間美と、そのデザインへのこだわりを詳しくご紹介いたします。
麻布十番「ばんげ」:伝統と現代が融合する和モダン空間
麻布十番に位置していた和食店「ばんげ」は、東京さぬき倶楽部の別館として運営され、香川県の食材や地酒を提供する特別な場所でした。この店は、明治時代に建てられた一軒家をリノベーションし、和モダンのデザインを融合させた空間として、多くの来客に愛されました。コロナ禍により閉店となりましたが、その独特な空間デザインは今も記憶に残る場所です。
デザイナー・IKKIによるリノベーション
このプロジェクトを手がけたのは、ノバレンズのデザイナーであるIKKI。彼は、建物の歴史的な価値を尊重しつつ、現代の和モダンスタイルを見事に取り入れることで、伝統と現代が調和した空間を作り上げました。特に、飲食店の内装に対しては「食」をより引き立てる空間作りを意識し、素材の選定や照明の配置には細心の注意が払われています。
食の体験を最大化するために、木材や石など自然素材を中心に用い、シンプルでありながらも温かみのある雰囲気を演出しています。これにより、料理そのものの味わいや香りを邪魔することなく、全体として調和した空間を提供することができました。また、照明デザインにもこだわり、控えめな間接照明を採用し、料理を引き立てるだけでなく、リラックスできる雰囲気を創り出すことに成功しました。
東京さぬき倶楽部と歴史的背景
「ばんげ」が位置していた東京さぬき倶楽部は、かつて都内には数多くあった都道府県人会館の一つで、地方から上京する人々が集う場所として長い歴史を持っていました。しかし、現在では「東京さぬき倶楽部」「富山県赤坂会館」「島根イン青山」のみが残っています。東京さぬき倶楽部は、地域のつながりを保ちながら、香川県の文化や食材を東京に伝える拠点となっていました。
この建物は、1972年に香川県民の活動や宿泊の場としてオープンし、建築家大江宏による設計で知られています。特に、エントランスに広がる吹き抜けのラウンジは、香川の風景をイメージしたタイルや煉瓦壁が特徴的で、ジョージ・ナカシマの家具が配置され、上品で落ち着いた空間が広がっていました。
自然と調和したデザイン
「ばんげ」が特別な存在であったのは、その周囲の環境も大きな要因です。都会の喧騒から離れ、緑に囲まれた場所に位置することにより、都心にありながらも自然の豊かさを感じられる空間を提供していました。大きな窓からは四季折々の美しい景色が広がり、特に夜にはライトアップされた庭が幻想的な雰囲気を演出していました。店内から外の景色を取り込む設計は、和の静けさとモダンな空間美を見事に調和させていました。
飲食店の空間デザインにおいて、ゲストが料理を味わう瞬間を最高にするための要素を取り入れ、家具の配置や席の間隔、視線の導線に至るまで細部にわたる配慮がされています。たとえば、各テーブルには適切な距離を保ち、プライベート感を演出しつつも、開放感を失わない工夫が施されています。また、木のぬくもりを感じさせる椅子やテーブルは、シンプルな美しさと機能性を両立させ、訪れる人々に落ち着いた雰囲気を提供しました。
再開発と惜しまれる閉店
残念ながら、コロナ禍と再開発の影響により、東京さぬき倶楽部は2020年4月末に閉館しました。元々、2020年のオリンピック後に閉館する予定でしたが、パンデミックによる影響で閉館時期が早まりました。東京さぬき倶楽部が立地していた麻布三田地域(旧三田小山町)は再開発が進んでおり、時代の変遷と共に歴史的な建物が失われることは非常に惜しまれています。
このように、ノバレンズは単なるデザインではなく、食体験を最高にするための空間作りにこだわっています。デザインや細部にこだわりのある飲食店やラウンジなど、空間を通じてお客様に感動を提供するため、細部にまで配慮したデザインを提案します。